労働時間はどこまでなのか?(2010年10月29日)
一般的に労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれ、
労務を提供している時間をいいます。
よくある質問なのですが、
仕事の前後の時間、例えば仕事前の着替えや、
始業前の簡単な準備や掃除、終業後の後片付けは
労働時間なのでしょうか?
労働時間には次のような判断基準があります。
朝の掃除、準備
始業前に簡単な机の雑巾がけをしたり、お湯を沸かしたり
することは昔からどこの会社にもあることだと思います。
この場合、始業前の掃除やお湯を沸かしたりすることが
命じられていたり、当番制によって事実上強制になっている場合、
黙示の業務命令があるとみなされた場合は労働時間となります。
社員が職場の仲間のために、自主的に掃除などをしている場合は
本人の自発的な行動とみなされ、労働時間にはなりません。
作業準備時間、後片付けの時間
通常の業務に付随する作業であれば、労働時間となります。
例えば、デパートなどで開店と同時に、全員が職場について
お客様を迎えるための開店準備作業や、
閉店後、翌日の仕入れを決めるために後片付けを兼ねて
売上と在庫を計算したりすること、
製造工場などにおいて翌日の始業と同時に作業を
開始するために、清掃をしたり、原材料の準備をすることなどは
労働時間とみなされるでしょう。
ただ、この場合も任意の業務を労働者が自発的に行う場合は
労働時間にはなりません。
更衣時間
労働者は、作業に適した服装で就労すべきであり、
更衣時間は、原則労働者の負担であるという考え方によれば
労働時間とはされませんが、
判例を見てみると、更衣時間については原則として
労働時間に含めないとする判例と
(日野自動車工業事件(最高裁一小:S59.10))
労働時間とする判例
(三菱重工業事件(最高裁一小:H12.3))
があるように、判例でも結論が分かれています。
事業所内において更衣を行うことを使用者から
義務づけられているとされた場合には、
使用者の指揮命令下に置かれたものとみなされ、労働時間とされます。
始業前の朝礼の時間
始業前の朝礼の時間に関しても、使用者の指揮命令によるか否かで
判断されることになります。
強制参加の朝礼、または強制ではないが、朝礼への参加状況が
人事考課に含まれたりする場合は労働時間と判断されるでしょう。
また、朝礼で点呼をとったり、当日の仕事の流れを説明するような
場合も、労働者としては参加せざるを得ず、労働時間となるでしょう。
以上のような基準をまとめると、準備作業や後片付けを
労働時間とするかどうかについては、
使用者に義務づけられたもの、または現実に不可欠なものの場合は、
使用者の指揮命令下に置かれ、業務性を有しているとされ、
労働時間になります。
常識的に考えれば、仕事が始められる状態で始業時間を迎え、
終業時刻になってから後片付けを始めるものだと思います。
しかし、そのための準備時間や後片付けの時間が労働時間に
該当した場合、給料の支払いが必要になってしまいますので、
労働時間を管理する際には、「世間一般の常識」だけではなく、 このような「法的根拠」があることに気をつけて下さい。